何も知らないということを知る。1941年。パリの尋ね人
Facebookで見かけたこちらの本を直感的にポチり。フランス文学って何となく読みづらいなぁと思っていたんですけど、読み始めるととまらなくなってしまいました。私は「無知の知」という言葉が好きなのですが、読めば読むほど己の無知を知るばかりで、それでいてパトリック・モディアノの世界にどっぷり引き込まれました。しかもパトリック・モディアノは2014年にノーベル文学賞を受賞しているんですね。フランスでは「モディアノ中毒」という言葉があるほど人気が高いとか、もう知らないことだらけ…(グーグル先生に教えていただきました)。
これは小説のようでいて小説ではなく、実際にあった尋ね人広告に端を発し、ドラ・ブリュデールというユダヤ人少女がなぜ行方不明になったのかを、モディアノが少ない情報から探すことを試みるというストーリーが展開されています。戦争のこともそうですけど、当時ユダヤ人に対する迫害は想像を遙かに超えるものであり、戦争の悲惨さ(と一言で言ってしまうのも申し訳ないのですが)と理不尽さは、後生に伝えることが現代に生きる私たちの使命であり、二度と同じような過ちが起こらないことを願うばかりです。
「アンネの日記」は読んだことのある人も多いかと思いますが(私も読みました)、この物語は、私たちの生活の中に慎ましやかに暮らす一人の少女が見たであろう風景や心情をマディアノが代弁しているようで、ドラが何だかすごく近い存在に感じられます。それだけにドラがたどった運命を想像すると何とも言えない気持ちになりますね。それでも、少しでも、ドラが過ごした時代と歴史的な背景に思いをはせることができてよかったと思える一冊です。
【1941年。パリの尋ね人】
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